「高崎こども食堂 らっこ広場」は、宮城県多賀城市で石井小児科を営む石井アケミさんが、多賀城市の高崎ではじめた活動です。今回は、石井さん、運営を支える大友みどりさんと郡司宏貴さんに、子どもたちのお腹と心の両方を満たす秘訣について語っていただきました。
インタビュアー:櫻田凌那(Pocci!学生チーム)
地域に支えられてスタート
―― 高崎こども食堂 らっこ広場では、どのような取り組みをされていますか?
石井さん:みやぎ生協多賀城店の一室をお借りして、子ども食堂の開催を月に1回、食材のお渡しを月に2回行っています。
―― らっこ広場を始めたきっかけは何ですか?
石井さん:私は医師になって50年になります。石井小児科を開業した時から「子育て支援」と「子育て文化の発信」の二つを掲げてやってきました。子ども達の診療を通して子育て支援をしながら絵本の読み聞かせの会を20年以上続けてきましたが、ある時、子ども食堂の活動をテレビで観て、こちらにも興味を持ったのがきっかけです。
当時、小児科の裏にある建物の一階が空いていたので、「子ども食堂をやってくれる人がいれば場所を貸します」と呼びかけてみたのですが、見つからなかったのでひとまず自分で始めることにしました。とはいえ、普段は仕事があるので協力してくれる人を探したところ、絵本の読み聞かせの会に初めから参加してくださっている、大友みどりさんが手伝ってくれることになりました。
―― らっこ広場を始めるまでに、どのような準備をされましたか?
石井さん:大友さんと二人で、幼稚園や児童館などに「子ども食堂をはじめます」というチラシを配りに行ったり、院内で調理器具やお皿の提供をお願いしたりしました。調理器具などは皆さん快く提供してくださり、仕事関係で色々な人との繋がりがあったのでボランティアも集まって、2016年6月から準備を始めて、同年9月には本格的に活動を始めることができました。現在は、大友さんと郡司宏貴さんが実務を担当してくれていて、私は運営をバックアップしています。
―― らっこ広場という名前の由来を教えてください。
ホームページなどに載せているらっこのイラストは、大友さんの娘さんが描いてくれました。大友さんも娘さんも、らっこが大好きなんです。らっこは「可愛らしい」というイメージに加え、動物の中でもとりわけ「丁寧な子育てをする」という特徴を持っており、「こどもらっこ」や「やろっこ」の「らっこ」という意味も込められています。また、広場という言葉には「誰もが集まれる場所」という想いが込められています。
地域の繋がりを美味しさに
―― 子ども食堂で使う食材は、石井さんが購入されているんですか?
石井さん:いえいえ、ほとんどは地域の方からいただいた物です。ご自宅で作った野菜を提供してくださったり、ご近所の飲食店さんから食材を分けていただいたりと、たくさんの方が活動を支えてくださっています。いただいた食材から大友さんがメニューを考えてくれるのですが、凄く料理が上手なので、多い時は10品ぐらい並ぶこともありました。
大友さん:「自分も子ども食堂をやりたいけれど、仕事との両立が難しいので、今活動している方を応援したい」と言っていただき、お米やご寄付をいただいたこともあります。
―― 子ども食堂の日はどんな雰囲気ですか?
石井さん:とっても賑やかで楽しいですよ。小児科の裏の建物で活動していた時は、30〜40人位で集まって楽しくご飯を食べたり、絵本の読み聞かせやコンサートなどたくさんの行事を実施していました。みんなでコミュニケーションがとれる場所を作れて幸せでしたし、そこで仲良くなったご家族もいらしたり、参加した人たちも幸せだったと思います。
―― 利用されている方からはどのような声がありますか?
郡司さん:私はこの活動に携わって2年半になりますが、どんな活動もしっかり感謝の声が返ってきます。
大友さん:食材のお渡しでは、利用される方と接する時間はたったの数分間です。それでも何度かお会いしているうちに、最近悩んでいることや自分の想いを話してくださるので、関係性が深まっていくことを実感します。私は何も言ってあげられないけれど、背中をさすって頑張ったね、と気持ちを伝えられたらと思っています。
石井さん:不登校だったお子さんが、らっこ食堂に来るようになってから学校に行けるようになったり、子育てに疲弊していたお母さんが、食材のお渡しを通して徐々に元気になられたりと、色々な変化が見られるのも嬉しいです。
子どもたちの居場所
―― らっこ広場を利用する子どもたちと接する時に、意識していることはありますか?
石井さん:小児科医の仕事上、さまざまな子どもに会うので、子どもたちの実情を把握しやすいところはあります。ご家庭ごとの事情を想像したりしながら、抱っこしたり一緒に遊んだりして、医師としてではない姿で、子どもたちのありのままを受け入れて接したいなと思っています。
郡司さん:私も自然体でいることでしょうか。目尻にしわを絶やさないようにしています(笑)。
大友さん:親御さん達は、職場やご近所、親戚付き合いで日々遠慮がありながら暮らしています。子どもたちも、保育園や幼稚園、家でも色々なストレスを感じながら過ごしていると思います。せめてらっこ広場にいる時だけは、羽を広げて自由にしてもらえるようにという心持ちです。子どもたちには「失敗してもいいんだよ、お利口ちゃんにしないで良いんだよ」と言ってあげたいです。
地域のみんなの居場所を目指して
―― らっこ広場の活動ボランティアに興味がある方、支援をしたいという方へのメッセージをお願いします。
大友さん:らっこ広場には「子どものお腹と心を満たす」という目標があります。お腹は美味しいものをいっぱい食べれば満たされますが、どうしたら心を満たす一助になるか、それは、らっこ広場に集まる大人達の気持ちが大事だと考えたんです。ボランティアの皆さんが頑張るのではなく、楽しんで力を発揮してもらうことで、大人達の良い「気」が満ちた場所になります。子どもたちはそういう気を敏感に感じ取るので、らっこ広場に関わる人たちが楽しく過ごし、温かい空間を作ることで、子どもたちの心を満たせると思っています。
郡司さん:らっこ広場には、0歳の赤ちゃんから80代のボランティアの方まで、幅広い世代の方がいます。そういう意味で、この地域の貴重な空間だなと痛切に感じています。らっこ広場は、単に食の支援だけではなく、世代を超えた居場所になっているということを念頭に置いて、少しでも支援をしていただければ嬉しいです。そして、その支援が、らっこ食堂の縁の下の力持ちになっているんだということをお伝えしたいです。
石井さん:ボランティアの皆さんがとっても楽しそうに活動してくれていて、あの笑顔を見ていると私も嬉しくなりますね。なかには「自分には子どもがいないけれど、ここに来ると子どもたちと接することができ、それが子どもたちのためになっていると思うと幸せ。手伝わせてくれてありがとう」と言ってくれる方もいます。利用される方だけではなく、運営している私たちも幸せになれる場所。らっこ広場の運営はとっても楽しいです。
高崎こども食堂らっこ広場
高崎こども食堂らっこ広場は地域の大人の力でこどもの未来を応援する場所です。私たちは「こどもの心とお腹をいっぱいにする!」をスローガンに多賀城市内の子育て世帯を対象に食の支援をしている任意団体です。
高崎こども食堂らっこ広場は地域の大人の力でこどもの未来を応援する場所です。私たちは「こどもの心とお腹をいっぱいにする!」をスローガンに多賀城市内の子育て世帯を対象に食の支援をしている任意団体です。