掛け声と共に繰り出されるパンチ、キック、そして子どもたちの笑い声。彼らは「少年少女キックボクシングサークル利府」の子どもたち。練習は毎週日曜日の午後3時から利府町総合体育館で行われています。このサークルでは、大会に参加して勝つことを目的にはしていないそうです。今回は「少年少女キックボクシングサークル利府」代表・阿部真太郎さんに、キックボクシングで子どもたちがどのようなことを学ぶのか、大会のためではない練習を行っている理由を伺いました。
インタビュアー:伊藤あさひ(Pocci!学生チーム)
「正しさ」を学びながら
――大会には出場していないと伺った時、とても驚きました。なぜ大会に出場していないのですか?
僕は、キックボクシングを現役の選手に教えていたり、キックボクシングの他にもいろいろと教えてきました。大会に出る人向けのジムや施設は沢山ありますが、大会を目指して練習するのではなく、もっと気軽に参加できる場所が意外と無いと感じていたので、それを形にした結果ですね。
――キックボクシングを始めたきっかけはありますか。
学校のすごくイケメンな先生がキックボクシングをやっていて、「ちょっと格好良いな」みたいな憧れもありました。はじめはそんな単純な理由だったんですけど、段々と「キックボクシングって面白そうだな」と思って。実際にやってみてそのまま続けてきたような感じですね。
――自分が習っていたことを子どもたちに教えようと思ったきっかけはありますか。
シンプルな理由で、昔から子どもが好きだったことはありますね。今も仕事柄、幼稚園などに行って体育指導をする機会があるので、体育指導とは別に、キックボクシングを練習できるサークルを作りたいと思ったのがきっかけです。
――子どもたちに教えていることで意識していることはありますか。
子どもたちは大人とは違って素直。素直な分、まっすぐ受け止めてしまう部分が大きいのでその分責任が問われます。キックボクシングは武道に近いところがあったりするので、正義感や道徳心を間違って覚えてしまうと、せっかく身につけたことを有効に使えなくなってしまいます。そういうことを責任を持って教えるという意味でも、キックボクシングはすごく面白いなと思います。
――子どもたちにこのサークルで感じてほしいことはありますか。
キックボクシングをやっていると体がすごく強くなるので、それを間違った方向に使わないようにということを特に言葉で伝えて、楽しんでいただきたいなと思います。
第三の居場所で
――モットーである「サードプレイス」はどのようにして決めましたか。
元々僕は陸上自衛隊に所属していて、職場の上下関係が厳しく、「上官の言うことは絶対」みたいな感じだったんです。そういう場の雰囲気だと、ありのままの姿を出しにくい性格の子どももいると思います。今の仕事をしていて僕が尊敬している先生が、生徒との距離が近く、ただ堅い感じでは無いんです。先生と生徒の距離感になると、気軽に喋れなかったり、お互いに思っていることが言えなかったりすることがあると思うので、お互い伝わりやすいような感じにしたいなと思った結果、何か良い言葉がないかなってなった時に、サードプレイスという言葉が浮かびました。
――居場所を大切にされているんですね。
どんな子でも「ここはすごく居心地が良くて、自分が思うように過ごせる」そう思えるような場所を作りたいという思いが、サードプレイスというモットーに繋がっています。ジムとかそういう場所ではなくて、もっと柔らかく気軽に参加できる場所みたいなイメージです。
――子どもたちとの距離で意識していることはありますか。
僕は比較的距離が近いかなと思ってはいるんですけど、塩梅は難しくて。サードプレイス、要は、家でも習い事をするわけでもない第三の場所では、近すぎても子どもたちにとって学びの環境としてはあまり適していない。子どもたちが悪ふざけをしたり、言うことを聞かなかったり、周りに迷惑をかけてしまうことは良くないと思うので、全体の雰囲気が悪くなってきたら、それは距離が近すぎているのかもしれないので、何かできることはあるかなって考えたりしています。
震災を経て
――キックボクシングがもっと広がってほしいという想いはありますか。
ありますね。僕が陸上自衛隊員だった頃、東日本大震災の時に救急活動をやっていたんです。その時に思ったのが、自分の身は自分で守る大切さ。震災を経験した方ならわかると思うんですけど、やはり東北の人って自分の身を犠牲にしてでも助けに行く方が多く、それで亡くなってしまった方もいた。
そういうことが起こらないように何をしたらいいか考えた時に、シンプルですけれども、やっぱり身体を鍛えたりとか、運動神経を伸ばすというのは意外と大事で、体が丈夫であればそれだけで自分の身を守ることができる。それって周りの方からするとすごく助かっているんです。
このことを間接的にでも良いから伝える良い方法がないか考えていた時に、ずっと続けてきたキックボクシングを通して子どもたちに伝えて、そこからどんどん大きく広がっていけば、後に繋がるのではないかと。そういう意味も含めて、キックボクシングが広まってほしいと思っています。
+αで身に着ける
――今後の活動目標はありますか。
今後の目標は、少しずつサークルの活動時間を増やしていきたいです。今は日曜日の日中の練習だけなんですけれど、いろんな人が参加しやすい時間帯を作って、発展できたらいいなと思っています。
――少年少女キックボクシングサークル利府に参加したいと思っている方、活動を支援してくださっている方へメッセージをお願いします。
キックボクシングができるサークルというよりは、キックボクシングだけではなく、色々な運動や遊びができるような環境を作っています。僕自身、国家資格も持っていますし、全国大会に出場したこともあるので、そういう意味でも安心して参加できるかなと思いますので、気軽に参加体験をしていただければと思います。キックボクシングでは、ミットなど消耗する道具が多いので、協賛してくださる企業の皆さまは本当に有難いなと思います。今後もよろしくお願いします。

少年少女キックボクシングサークル利府
年中から小学生向けの利府町で活動していますキックボクシングサークルです。手足を器用に使う競技なので効率良く運動神経を伸ばすことができ、試合を目的としていないので、年齢や性別関係なくみんな楽しんで活動しております。
年中から小学生向けの利府町で活動していますキックボクシングサークルです。手足を器用に使う競技なので効率良く運動神経を伸ばすことができ、試合を目的としていないので、年齢や性別関係なくみんな楽しんで活動しております。