Pocci!地域団体 
体験記

利府町刈安染めプロジェクト

染めるだけでは終わらない「刈安染め」

私が体験してきました!

伊藤 あさひ

Pocci!学生チーム

  1. 刈安染めに挑戦!

    刈安染めとは、刈安(かりやす)というススキに似た植物を用いた染め物です。その色は「刈安色」と呼ばれる綺麗な黄色で、日本の伝統色の一つになっています。利府町には昔、都からやってきたお姫様がこの地に刈安染めを伝えたという伝説があるのだそう。今回は、利府町の伝統文化である刈安染めを体験させていただきました。

    体験場所のキッチンスタジオに入った瞬間、お茶のような香りが鼻をくすぐりました。目に飛び込んできたのは、乾燥した草が入った大きなビニール袋と、大きな鍋の中で煮えている薄黄色の液体です。「あの草が刈安?この液体で布を染めるんだろうか?」疑問は尽きませんが、参加者の方々も続々と集まってきた様子。空いている席に座るや否や、刈安染め体験が始まりました。

    まずは、染める布に付ける模様を考えます。同じグループの方々とどのような模様にするのか話し合うワクワク感!小学校の頃の理科の授業を思い出します。

    模様を付けるために、布を輪ゴムで縛ったり、ビー玉をくるんだりします。私の布は、欲張りに一面模様尽くし。せっかく体験するのであれば、たくさんいろんな柄を詰め込み、私だけの染め物を作った方が面白いに違いないと思ったからです。特に、布の端を結ぶ時は柄をはっきりさせたいと思い、固く強く結びました。それが後に大変なことになるとは知らずに......。
    一緒に体験をしていた取材メンバーは、お祭りの屋台の宝石すくいで見かけるイルカの形をした石を布でくるんでいて「やられた!その手があったか!」と思いました。このように、他の参加者のアイディアに驚かされるのも、刈安染め体験の魅力なのかもしれません。

    次に、刈安から煮出した染液に浸します。一番初めに見たビニール袋に入っていた草は、やはり、染液を作るために短く切られた刈安でした。パッと見た感じは土手や河川敷に生えている植物となんの違いもなさそう。それでも、この植物が綺麗な黄色を生み出すのだと考えるとなんだか不思議な気持ちに。ここから、布を約40分染液に浸します。

  2. 刈安染めの歴史を学ぶ

    布を染めている間、利府町赤沼にある染殿(そめどの)神社の方から、神社に伝わるお話を聞かせていただきました。
    都からやってきた身重のお姫様が赤沼で宿を借り、出産をしました。その子育てを手伝った村人たちへの感謝として、お姫様がこの地に裁縫や染め物を伝えたのが刈安染めであり、様々な知識を伝えたお姫様を祀ったのが染殿神社なのだといいます。子育てを助け合う様子が表れている素敵なお話でした。

  3. 伝統の色、現る!

    いよいよ布が染まった頃でしょうか。染液から布を取り出してみると、確かに染まってはいるけれど、思ったより色が薄いというのが第一印象でした。ところが、色を定着させる媒染液をかけると……じわじわと薄い黄色から鮮やかな黄色へと変化し、綺麗な刈安色が表れ、参加者の方々も皆歓声を上げていました。

    しかし、ここで事件が発生。私の布は、柄をしっかり付けるためにきつく固く結んだせいで、結び目がほどけません。「しっかりと模様がついたんじゃない?」と参加者の方からフォローしてもらいましたが、私はその言葉が聞こえないくらい、いかに布を傷つけずに結び目をどうにかできないか、ということばかりに集中していました。

    なんとか結び目を解き、最後に水で洗って乾かせば完成です。周りからは「きれい!」という声や「この模様、どうやったの?」という会話が聞こえ始めました。布を乾かしに廊下へ出ると、刈安色に染まった布がずらり!圧巻です。使用した布によって染まる色合いも変わるようで、綿はタンポポのような優しい黄色へ、シルクは鮮やかな深みのある黄金色に染まっていました。

  4. 魅力が詰まった刈安染め

    刈安染めは、染めることが楽しいだけではなく、媒染液や使用する布によって色が変化すること、一緒に参加している人たちとそれぞれの色や柄を鑑賞することなど、様々な魅力が詰まっていることに気づきました。短い時間の中で刈安染めの歴史などについても学ぶことのできるこの体験会は、自由研究にもピッタリ。私が小学生の頃にこの体験会に参加していれば、クラスのなかで自由研究最優秀賞をとっていたこと間違いなしだったでしょう。刈安染め体験は、楽しい思い出になると共に、歴史や植物の勉強にもなるのではないでしょうか。

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