少し肌寒い秋の早朝、宮城県多賀城市立城南小学校の前に広がるグラウンドで、今年で創立45周年を迎えた少年野球チーム「浮島サザンカジュニアーズ」の子どもたちが黙々と練習の準備をしています。そんな中、その様子を少し離れた所から見守っている監督の姿がありました。今回は、監督の高橋良弘さんに、野球を通じて子どもたちとどう向き合っているのか語っていただきました。
インタビュアー:櫻田凌那(Pocci!学生チーム)
野球を自由に楽しむチーム
――浮島サザンカジュニアーズの活動日や活動場所を教えてください。
基本的に土、日、祝日に宮城県多賀城市立城南小学校のグラウンドで、「自分で考えて行動」をモットーに活動しています。最近では、練習日にはグラウンドの半分を解放して、子どもたちが自由に来てボール遊びができるようにしています。
――浮島サザンカジュニアーズには、子どもたちや指導者の方は何名いますか?
うちのチームでは基本的に年長さんから小学5年生までの子どもたちを受け入れていて、現在13人です。指導者は私を含めて4人いますが、みんな、以前自分の子どもがこのチームに在籍していたお父さんたちなんです。
――子どもたちがこのチームに入るきっかけは何ですか?
野球がやりたい子どもたち向けに野球の体験会を行っているので、それに参加することが最初のきっかけになっていると思います。あとは、子どもたちの練習や試合の様子を保護者の方がInstagram、Facebook、goo blogなどのSNSで発信してくれているので、そういうのを見てチームの雰囲気を感じてもらって、うちのチームを選んでくれる方が入っているイメージです。
「自分で考えて行動」を掲げる理由
――「自分で考えて行動」というチームのモットーは、高橋監督がお考えになったんですか?
はい。私が2年前に監督に就任した時に決めたモットーですね。私は普段、会社勤めですが、社内の若い人たちを見ていると、言われたことはやるけれどそれ以上のことはなかなかしようとしないように見えます。やっぱり自分で考えて行動しないと、仕事だけではなく、自分の人生も面白くはならないので、子どもたちには小さい頃から自分で考えて行動することを今から意識付けした方がいいと思っているので、指導していく中で「自分で考えて行動」は私の永遠のテーマです。
野球って、ピッチャーが投げるまでの間、バッターが変わるタイミングの間、この一瞬一瞬の時間が大切なんですよね。この時間に自分で考えてプレイできるようにさせたいですし、自分で考えれば記憶に残るので、我々指導者も頭ごなしに言わないです。練習の準備とか片付けも子どもたちに「ああせえ」「こうせえ」と極力言わないようにしています。
また、私は常日頃から、野球は一人ではできないと言っています。そのため、試合で誰かがミスした時に「何やってんだよお前」と言うのではなく、「頑張れ、そんなミス気にしなくていいよ、みんなでカバーするから」と言えるような、仲間を敬い尊重する心を持って、人を思いやることができる大人になってほしいと思っています。
野球の腕と人としての強さを磨く
――「自分で考えて行動」というモットーを意識した取り組みはありますか?
うちのチームでは、練習の始めに2分間スピーチの時間を設けています。練習日の一週間前に私から子どもたちにテーマを伝えて、そのテーマに沿って一人ずつみんなの前に出てもらって、2分間スピーチをしてもらいます。スピーチを聞いている子どもたちには聞いた感想を話してもらいます。今の子どもたちを見ていると、やっぱり人前で話すことが苦手ですね。今は小学生だからまだいいですけど、中学生以上になった時にきちっと人前で自分の考えをまとめて、相手に分かりやすく伝えることは非常に大事なことだと思います。
――2分間スピーチを経て、子どもたちにはどういった変化がありますか?
一番低学年で小学3年生の子もスピーチをしていますが、彼はとても小学3年生とは思えない感じで上手に喋りますよ。子どもたちにとって今は嫌かもしれないですが、将来大人になった時にこの経験が生きるんじゃないかなと私は思っています。
――2分間スピーチの他に取り組まれていることはありますか?
基本的に練習日は休日なので、どうしても次の練習まで間が空いてしまい、子どもたちの成長に波があります。なので、子どもたちには日々の自主トレーニングの内容を記録してもらって、毎月提出してもらっています。ただ、これは言葉の通り自主トレーニングで強制ではないので、保護者の方には「子どもたちに自主トレーニングをしなさいと言う必要は全くありません、自発的にやらせてください」と言っています。やらなければやらないで結構。ただ、やっている子とやらない子では練習や試合を見てても上達が違いますね。私から誰がどれくらい自主トレーニングをやっているかは子どもたちには言わないので、自分で他の子の上達を感じ取って、トレーニングを増やす子どももいます。
――練習以外で取り組まれていることはありますか?
今年の8月上旬に、保護者の方にお寺の住職をしている方がいらっしゃるので、その方のお寺の本堂をお借りして夏合宿を行いました。保護者の方も一緒に一時間程度の写経をやったり、木魚を叩いてお経を唱えたりしました。子どもたちの年齢だと人の話を聞き続けるのもなかなか難しいので、集中力を保って心を落ち着かせる体験をさせてもらいました。また、子どもたちは震災後に生まれているので、東松島市の震災伝承館に行って、震災当時の状況や当時の映像を見て震災の教訓を知ってもらうといった取組も行いました。
プレーヤーとして、
人として成長できるチームを目指す
――高橋監督にとって、チームはどのような場所ですか?
少年野球というスポーツを通して、子どもたちの成長機会に関われる貴重な場所だと思っています。私が野球で子どもたちと関わるのは、野球を教えることが一番の目的ではなくて、子どもたちの一番大事な小学校の成長時期に関われるためです。その手段が野球というだけなんです。
――高橋監督の原動力は何ですか?
やっぱり子どもたちが試合に勝って喜んでいる姿を見るのが一番ですかね。特に大きい大会で勝った時って、すごく子どもたちも喜びます。子どもたちには絶対に試合中には泣かないことと言いつつも、私は涙もろいのでじんときて泣いてしまうことが多いですね(笑)。
――保護者の方にとって、チームはどんな場所だと思いますか?
子どもと一緒にいろんなスポーツができるのって小学生までなんですよね。それ以降は親はほとんど一緒にスポーツをすることはないので、この時期に保護者の方も一緒にスポーツを楽しんでほしいと思っています。だからうちは指導者以外でも子どもたちに野球を教えていいよというスタンスなので、やる気満々のお父さんなんかは自分のグローブを持ってきて一緒に練習していますよ。その結果、大会で優勝したり良い結果に結びつくと、子どもたちだけじゃなくて外で見守っている保護者の方も嬉しいと思います。
――これから子どもたちや保護者の方とどんなチームを作っていきたいですか?
やっぱり子どもたちには楽しく野球をやってほしいんですよね。きちっと自分たちで考えながら楽しくプレーして、その結果、大会優勝とか良い結果に結びつけばいいなと思っています。うちのチームでは年度の終わりに納会をやるんですけど、私はその時の挨拶で、プロ野球チーム読売ジャイアンツの二軍監督をされている桑田真澄さんの言葉を話します。「野球を楽しくやるなら、上手くなるしかない」という言葉に、「上手くなるには練習あるのみ」を私が付け足して子どもたちに伝えています。やっぱりずっと負けていると楽しくないじゃないですか。野球は勝ってから楽しくなるので、子どもたちには自主トレーニングに打ち込んでもらったり、自分で考えて行動する力を身につけてもらうことで、将来に活きる経験と、仲間と一緒に勝利を掴む経験をしてくれたら、私は本当に嬉しいです。
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浮島サザンカジュニアーズ
多賀城市で活動している少年野球チームです。「自分で考え行動」をチームモットーとし、野球の技術だけでなく、挨拶、感謝の気持ちを常に持つこと、仲間を大切にすること、物を大事にすること等たくさんの事を学べます。インスタやブログもご覧下さい。
多賀城市で活動している少年野球チームです。「自分で考え行動」をチームモットーとし、野球の技術だけでなく、挨拶、感謝の気持ちを常に持つこと、仲間を大切にすること、物を大事にすること等たくさんの事を学べます。インスタやブログもご覧下さい。