宮城県利府町の閑静な住宅街のそばにある広々としたグラウンドでは、週末になると、利府町の少年少女軟式野球スポーツ少年団「利府レッドスターズ」の練習風景が見られます。この野球チームを立ち上げた監督の井上雄介さんに、野球を通した子どもたちの人間力の高め方について伺いました。
インタビュアー:櫻田凌那(Pocci!学生チーム)
地元への想いを形にしたチーム
―― 井上さんは、どのような想いから「利府レッドスターズ」を立ち上げたのですか?
以前は違うチームで指導をしていましたが、生まれ育った利府町に何も貢献できていないと感じていました。そんな時、地元の知人から「野球チームを立ち上げてくれないか」と声をかけてもらい、2015年に「利府レッドスターズ」を立ち上げました。今年でチーム結成から9年目になります。
―― 2024年現在、何人の子どもたちが所属しているのでしょうか?
現在、幼稚園児から小学6年生までの計23名が所属しています。6年生のメジャーチーム、5年生のルーキーチーム、4年生の育成チーム、3年生以下のキッズの各クラスに分かれ、主に週末に練習や試合を行っています。小学校1年生、幼稚園年中から年長を受け入れているスペシャルキッズのクラスもあります。
―― 利府レッドスターズの子どもたちにお会いして、自分から元気よく挨拶をしたり、率先して練習の準備をしているのがいいなと感じました。
子どもたちには「挨拶は習慣」と伝えています。成長すればできるという考えではなく、小さい頃からできるように習慣づけています。 また、練習の準備はすべて子どもたちに任せています。大人がやるよりも時間はかかりますが、やるべきことを自分で考えてもらうことによって、思考力や自立心を育てることを大事にしています。
思考力と自立心を育てる
―― 思考力と自立心を育てるためには、どのような練習をしていますか?
利府レッドスターズでは、年に2回合宿を行っていますが、実は合宿中に野球はしません。例えば、合宿の荷物を自分で準備・管理・整理整頓などをすることも、子どもたちの思考力や自立心を育てる行動の一つです。合宿先は、国内だけではなく海外に行くこともあります。選抜チームで、当チームから何名か行った事があります。言語も文化も違う環境で行動することは、子どもたちにとって大きな刺激になっています。
―― 海外にも行くのですね!
はい。 選抜チームで台湾に行った時は、子どもたちに目的地を伝え、大人を引率してもらいました。地下鉄の切符を買うところから乗り換えまで、すべて子どもたちがやります。元々一人で切符を買ったり電車に乗ったりできなかった子も、最終的には自分でできるようになるんです。
大人でも、不安で身構えたり、考え込んで動けなかったりすることはありますよね。日頃から自分で考えて行動することを心がけることによって、一見難しそうに見えることでも自分の力で乗り越えることができます。この力は野球をする上でも大切なことです。
目指すのは誰もが応援したくなるチーム
―― 子どもたちに野球を教えるうえで、大事にしていることはありますか?
過去の野球の練習方法にとらわれるのではなく、自分たちに合った練習をしたいという思いから、結成時から周りのチームとは異なる練習方法をどんどん取り入れてきました。年々野球の競技人口が減少しているなか、これまでの練習方法では野球は衰退すると感じています。
できなかったことに挑戦して、できたらとても楽しいじゃないですか。もちろん、挑戦してもできない時や、できていたことができなくなる時もありますが、努力して成功した経験がある選手は、失敗しても努力を続けます。その経験が次の努力への糧や活力になるとも伝えています。
―― 学校生活だけでは得られない経験ですね。
そうですね。正直、所属している子どもたち全員にプロの野球選手になってほしいですが、それは難しいのが現実です。野球を辞めて、一人の人間として社会でどのように生きていくのかを考えた時、挨拶・礼儀、道具を大切にすること、感謝の気持ちを持つことが人として大事になると思います。
―― 井上さんが目指しているのはどんなチーム像ですか?
団員を増やし、強くて良いチームで誰が見ても応援したくなるような、周りのチームがやきもちを焼くほど良いチームづくりをしていきたいです。
―― これから野球をやってみたいと思っている子どもたちに向けてメッセージをお願いします。
利府レッドスターズは、選手の成長を一番に考える「選手ファースト」なチームです。年齢は関係なく、小学校1年生でもレギュラーメンバーとして活躍しています。一人でも多くの子どもたちが入団し、野球の実力だけではなく、たくさんのことに挑戦して人間力も高めてもらいたいと思っています。いつでも見学に来てチームの良さを感じてください。皆さんに「選んでもらえるチーム」を目指して、これからも子どもたちと一緒に頑張ります!
利府レッドスターズ
2015年12月利府町に新しく設立した少年少女軟式野球スポーツ少年団です。野球を通じて挨拶・礼儀・支えてくれている人達への感謝の気持ち、仲間を大切にする事、道具の整理整頓などを中心に育成、指導をしています。
2015年12月利府町に新しく設立した少年少女軟式野球スポーツ少年団です。野球を通じて挨拶・礼儀・支えてくれている人達への感謝の気持ち、仲間を大切にする事、道具の整理整頓などを中心に育成、指導をしています。